悪意がなければよいわけじゃない!敷金返還額に関係する賃貸の「善管注意義務」の注意ポイント

悪意がなければよいわけじゃない!敷金返還額に関係する賃貸の「善管注意義務」の注意ポイント

賃貸物件を借りる側は、善管注意義務を守らなければなりません。善管注意義務は敷金の返還額に大きく影響するので、知らずにいると損をしてしまうこともあるでしょう。善管注意義務とは何か、どんなケースが善管注意義務違反にあたるのか、善管注意義務を防ぐには、などなどの賃貸マンションに住むなら知っておくべき注意点を解説します。

善管注意義務とは?

善管注意義務は、民法第400条の「善良な管理者としての注意義務」のことで、取引上、一般的に要求される程度の注意を義務付けるものです。中古車業界や医療業界など幅広く適用されており、賃貸契約にも適用されます。

賃貸契約における善管注意義務では、借主が借りた部屋を管理者として注意を持って扱うことが求められます。社会通念上要求される程度の注意義務が発生し、不注意や過失で部屋を破損させた場合は、管理者としての義務を怠ったとして「過失」とされます。

借主負担となる善管注意義務違反の例

・クーラーの水漏れを放置したため、床や壁にシミや腐食ができた場合
・結露やカビを放置し、壁にシミや腐食ができた場合
・通常のクリーニングでは落とせないほど、タバコのヤニが壁に染み付いた場合
・台所の手入れを怠り、油汚れやススがこびりついてしまった場合
・浴室、トイレ、洗面室の手入れを怠り、ひどい水垢やカビ汚れが生じた場合
・布、ガム、タバコ、ビニール製品、髪の毛、不溶性の物など、排水口の詰まりの原因となる物を流し、詰まりが起こった場合
・借主の不注意によって雨が室内に吹き込み、フローリングが色落ちした場合

善管注意義務違反になる場合と、ならない場合の線引き

 悪意がなければよいわけじゃない!敷金返還額に関係する賃貸の「善管注意義務」の注意ポイント

善管注意義務違反となるのは、借主の不注意や過失がみられる場合です。例で挙げたように、結露やカビを放置したことによって生じたシミや腐食は、借主が本来果たすべき義務を怠った結果生じたと判断できるので、原状回復費用は借主が負担しなければなりません。故意でなかったとしても、気づいていながら放置していれば善管注意義務違反となる可能性大です。賃貸だからといって手入れを怠ってよいわけではないのです。

経年劣化、通常の使用範囲で生じた損耗は善管注意義務違反にあたりません。壁紙の日焼けや壁に貼ったポスターの跡も通常の使用範囲内に含まれます。タバコのヤニ汚れは常識的な範囲内ならば善管注意義務違反になりませんが、クリーニングで落とせないほど染み付いてしまった場合は善管注意義務違反となる場合があります。

善管注意義務違反になる、ならないの線引きは、不注意・過失であるか、それとも経年劣化や通常の使用範囲内であるかです。通常考えられる常識の範囲内で使用しているならば、善管注意義務違反となりませんので、借り物だから汚していいと考えずに、自分の持ち物と同じように扱わなければなりません。

善管注意義務違反は敷金の返還額に影響する

経年劣化、通常の使用範囲内で生じた損耗に対する原状回復費用は貸主負担となりますので、敷金からは差し引かれません。しかし、借主の不注意・故意で生じた毀損に関しては、敷金から原状回復費用が差し引かれます。借主負担の原状回復費用が多くなるほど返還される敷金が減ってしまうので、退去時に敷金を多く返還してもらうには善管注意義務に違反しないように使用しなければなりません。

原状回復費用をどこまで貸主負担とするか、借主負担とするかは一定の基準はあるものの、大家さんや管理している不動産屋の裁量によるところも大きく、借主の過失であっても、大家さんによっては「どうせクリーニングするからこれぐらいならいいですよ」と許してもらえる場合もあります。

借主負担の毀損と判断された場合でも、そうではないことを説明できれば原状回復費用を請求されずに済む可能性があります。とはいえ、故意・過失であるのにそうではないと主張するのはマナー違反ですので、きちんと納得してもらえる理由が必要です。

善管注意義務違反を防ぐには?

結露やカビによるシミ・腐食、水回りの水垢は、その都度きちんと掃除をしていれば防げることです。借主は部屋を掃除する義務がありますので、その義務を果たしていれば多くの場合は善管注意義務違反にはなりません。面倒くさいから掃除しなかった、では義務を怠ったことになります。日頃からちゃんと掃除をするのが一番の対策です。

留守中にペットが飲み物をこぼしてしまい、床や壁にシミができてしまうなど、故意ではないケースもあるでしょうが、外出時はペットがこぼしてしまいそうな飲み物は冷蔵庫にしまっておくなど、注意していれば防げることも多いはずです。

入居時に元々ついていた傷やシミなどを請求されることもあるので、入居時に部屋の写真を撮っておくと、証拠として説明できます。

まとめ

いかがでしたか? 不注意や故意の毀損を指摘されると、敷金から原状回復費用が差し引かれてしまいますので、敷金を多く返還してもらうためにも部屋は綺麗に使いましょう。

参考)
賃貸用語辞典・善管注意義務