賃貸借契約における違約金とは
一般的な賃貸借契約である普通借家契約は、借地借家法に基づく「建物賃貸借契約書」によって結ばれます。普通借家契約における賃貸借契約期間については、契約期間の定めのないものと定めのあるものの区別がなされます。特に契約期間の定めがない場合、借主は建物賃貸借契約に記載されている解約予告期間の定めにより、借主からの解約予告から一定期間(民法617条1項2号によれば3ヶ月とされていますが、一般には1~3ヶ月とされているケースが多いでしょう)後に解約することができます。一方、契約期間に定めがある賃貸借契約の場合、契約書上で「中途解約権」が認められているかどうかによって状況が異なってきます。中途解約権が認められている場合、解約予告期間の賃料を支払うことで解約できます。しかし中途解約権が契約書に認められていない場合、原則として中途解約はできません。こういうケースでどうしても解約したい場合は貸主に違約金を支払う必要がある場合があります。
「違約金」の存在理由
貸主は、借主との普通借家契約によって「継続的な賃料収入が保証されているもの」と考えます。また借主は「当該物件での継続的な居住が保証されているもの」と考えます。これは契約によって守られるべき双方の権利であり利益ですが、契約が突然一方的に解除されればそうした権利・利益は損なわれてしまいます。
法律用語では、このような「本来得られるべきであったにも関わらず得られなくなった利益」のことを遺失利益と呼びます。借主からの中途解約の申し入れによって貸主に遺失利益が発生した場合、貸主はその遺失利益を補てんするため、借主に「契約を守らなかったことに対する違約金」として数カ月分の賃料に相当する違約金を請求する場合があります。
なお、違約金の金額については「物件賃料・共益費の相当額」を基準に定められているケースが多いようです。ただし残りの契約期間によって金額が増減することもあり、たとえば契約期間が残り数ヶ月という段階であれば、賃料・共益費の一ヶ月分、残りの契約期間が長くなるにつれて2ヶ月分、3ヶ月分・・・と値上がりしていく物件もみられます。
解約に関するルール
契約期間に定めのある普通借家契約では、借主も貸主も契約期間中の解約を要求することは認められていません。ただし、下記のような特例を除きます。
当事者同士で合意がある場合
上記で説明した通り、建物賃貸借契約書に中途解約権が認められている場合は、中途解約に対して貸主・借主の双方の合意があるとみなされ、借主は解約予告期間の賃料を支払うことで賃貸借契約を解約できます。
また契約期間に定めのない普通借家契約では、借主・貸主どちらからでも解約を申し入れることができ、その申入れから3ヶ月が経過すると契約は終了します(民法第617条1項)。ただし、住居は借主にとって生活の基盤となる重要なものですから、貸主からの解約申し入れについては正当な自由がある場合を除き、一方的な契約終了は認められません。
無断転貸・増改築・相当期間の賃料不払い
契約した部屋を知人に又貸しする、貸主の許可なく戸室の改装を行うなどの行為は多くの場合契約によって禁じられています。こういった契約違反行為があった場合には、契約期間に達していなくても一方の意思で解除が可能です。