敷金返還に関わる原状回復の条件と自分でできる壁紙&フローリングの補修方法

敷金返還に関わる原状回復の条件と自分でできる壁紙&フローリングの補修方法

敷金は物件を借りる前の原状回復するための保証金です。つまり、汚したり傷つけたりした部分を自分で直せれば、その分敷金の返還額が増やせます。今回は、国土交通省が定めている原状回復費のガイドラインの解説と、壁紙や床の傷・汚れを自分で直すためのテクニックを紹介します。

中には借主が負担しなくていい原状回復費もありますので、入居前にガイドラインを確認しておいた方が退去時のトラブルを防止できます。とはいえ、貸主負担の傷や汚れであってもキレイにして退去する方が気持ちがよいですし、余計なトラブルを防ぐ効果もあります。退去時はなるべく部屋をキレイにしておきましょう!

国土交通省が定める原状回復のガイドライン

 敷金返還に関わる原状回復の条件と自分でできる壁紙&フローリングの補修方法
出典:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省住宅局)

原状回復は借主が全面的に義務を負うものではありません。貸主が負担すべき原状回復もあるのです。
そこまで借主が負担してしまうと損をしてしまうので、どんな汚れや傷について借主に責任が生じるのか、また責任が生じないものは何なのかをきちんと理解しておきましょう。

国土交通省は敷金返還や原状回復のトラブル防止のために「原状回復のガイドライン」を設けており、原状回復について以下のように定義しています。

賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるよう
な使用による損耗・毀損を復旧すること

善管注意義務とは民法第400条で定められている義務で、「善良な管理者の注意義務」を略したものです。善管注意義務は債務者の職業、社会的、経済的地位に応じ、一般的に要求される注意を指します。

賃貸不動産の場合、借主は引き渡しが完了するまで一般的に要求される注意を払う義務が生じ、義務を怠ると借主に原状回復義務が生じます。つまり、借主が一般的に求められる注意をおこたったことが原因で生じた不動産の損耗は借主側の責任となると法律で定められているわけです。

国土交通省が原状回復費のガイドラインを定義していること、善管注意義務という法律があることは知らない方は多いのではないでしょうか。賃貸の義務はきちんと法律で定められていることですので、貸主と借主の双方が知っておくべきことです。

原状回復の負担のライン

貸主の負担

以下のような経年変化、通常損耗は基本的に貸主が負担します。

  • 壁のポスター跡
  • 壁の画びょう穴・ピンの穴
  • テレビ、冷蔵庫などの設置による壁紙の黒ずみ
  • 日照による壁紙・畳の変色
  • 自然災害によって破損したガラス

借主の負担

善管注意義務を怠る、不注意によって生じた損耗は借主の負担となります。

  • 家具の移動などによって生じたフローリングや柱の傷
  • 結露の放置によって広がった壁のシミ・カビ
  • 下地ボードを張り替えなければならない程度の釘穴・ネジ穴
  • タバコが原因の畳の焼け焦げ

ポスターの跡や画びょうの穴は借主が負担しなくてもいい

ポスターを張ったり画鋲で壁に何かを留めるのは借主の故意のため、借主の責任で原状回復しなければならないと勘違いしやすいポイントです。

下地ボードを張り替えが必要になるぐらい深く開けた釘穴・ネジ穴は借主負担となりますが、ポスターを貼ったことによって壁にできた跡や、ポスターなどを貼る際に生じた画びょう穴は、借主が負担しなくてよいことになっています。

ポスター跡や画びょう穴は通常の生活で生じる損耗ですので、借主が負担する必要はありません。もしポスター跡、画びょう穴、日照による壁やけを理由に敷金を差し引かれたら交渉をし、差し引かれた敷金を返還してもらうことを検討しましょう。

フローリングの凹み

 敷金返還に関わる原状回復の条件と自分でできる壁紙&フローリングの補修方法

重いものを落としてしまったり、引っ越しの時に家具などでついてしまったフローリングの凹みは、アイロンを使うとある程度回復させることができます。木は水分を吸収すると膨張する性質を持っているので、凹んだ部分に水分を含ませてアイロンで温めることにより、水と熱で凹んだ部分が膨張して凹みが目立たなくなるという原理です。

ただし、この方法が使えるのは木製のフローリングの場合のみです。樹脂製のフローリングマットに対してアイロンを当てると溶けたり焦げたりしてしまうので、この方法を行ってはいけません。

用意するもの

  • アイロン
  • タオル

フローリングの凹みの直し方

  1. 凹んだ部分を満たす程度の量を水をかける
  2. 水をかけた部分をタオルで覆う
  3. アイロンを最高温度に設定し、タオルの上から5〜10秒押しつけて離すを数回くり返す

※木材や塗装によって効果に差があるため、凹みを回復できない場合もあります。

壁紙の汚れ落とし

通常の生活の範囲で生じる壁紙の汚れは貸主負担となりますが、余計なトラブルを防ぐために、また気持よく退去するために壁紙をキレイにしておく方がいいかもしれません。

壁紙の汚れは重曹を使うとキレイに落とすことができます。よほどしつこい汚れでなければタバコのヤニも落とせるので、重曹を買っておくと便利です。重曹は消臭効果もあるので、消臭剤としても活躍します。軽いタバコのヤニ汚れなら、市販の中性洗剤でも落とせます。

重曹水の作り方&使い方

  1. ぬるま湯400mlに、重曹大さじ2杯を入れてよく混ぜる
  2. 霧吹き容器に移し替え、壁紙の汚れのある部分に噴きつけ、雑巾などで軽くこすって汚れを落とす

水よりもぬるま湯を使う方が汚れが落ちやすいです。壁紙の継ぎ目に噴きつけると壁紙が剥がれてしまうことがあるので注意しましょう。

キッチンの壁の油汚れ落とし

 敷金返還に関わる原状回復の条件と自分でできる壁紙&フローリングの補修方法

キッチンの壁の油汚れにも重曹が活躍します。アルカリ性の重曹は、油汚れなど酸性を中和してくれるので汚れが落ちやすくなります。軽い油汚れには重曹水を使い、しつこい油汚れには重曹ペーストを作ります。

重曹ペーストの作り方&使い方

  1. 重曹2、水1の割合でよく混ぜる
  2. 油汚れがしつこい場所に塗ってしばらく時間を置く
  3. 古歯ブラシなどで汚れを落とし、雑巾などで拭き取る

敷金返還、原状回復のトラブルを防止するために

原状回復についてのガイドラインが定義されているものの、貸主によって認識が異なります。認識の違いでトラブルになるケースもありますので、入居前に敷金返還の条件についてきちんと確認しておきましょう。また、入居前にすでにあった損耗も原状回復費に含まれてしまうケースもありますので、入居前に部屋の状態を確認しておいた方がよいでしょう。

まとめ

いかがでしたか? ガイドラインでは通常の生活の中で生じた汚れや穴は貸主負担とされていますが、貸してくれた大家さん、住んだ部屋に対して感謝の気持ちを込めてある程度キレイにしておきたいものです。キレイにしておくと、借主負担の損耗であっても原状回復費をまけてくれる気前のいい大家さんもいます。無用なトラブルを防いで、気持ちよく退去したいですね。