こんにちは、ライターのカツセマサヒコです。
みなさんは都内で一人暮らしをするなら、どんな物件に住みたいですか?
築5年以内で、恵比寿駅まで徒歩3分で、10帖以上で、バルコニーがあって、ロフトがあって、浴室乾燥機が付いていて、家賃が5万円代? なにそれ。前に住んでた人どんな死に方したの。
一人暮らしをするならできるだけ贅沢な暮らしをしたいものですが、世の中には「憧れの土地に住めるなら、どんな物件でもいい」と考える人もたくさんいます。
今回は下北沢駅から徒歩3分、家賃4万円だけど、築50年、風呂なし、和室6帖の物件に住んでいる女性の家に突撃取材に行きました。
ちなみに下北沢は、東京都世田谷区にある音楽と演劇とサブカルその他諸々がごちゃごちゃに混ぜ合わさった若者に人気の街。渋谷駅から電車で3分とアクセスも良好です。その分、1Kの平均家賃相場は8.57万円と少し高め。
今回取材に応じてくれたのは、シングルハックでも記事を書いているライターの佐々木ののかさん。「下北沢駅の近くだけど、風呂なし物件に住んでます」と聞いたときは正直かなり驚きましたが、この暮らしをかなり楽しんでいるらしい。一体どんな家なのか、さっそくお邪魔してみたいと思います。
インテリアと化したカップ焼きそば
玄関をくぐるとキッチンが。なぜかキッチン棚に、たくさんの本やカップ麺、非常食が並んでいる。
しかも、カップ焼きそばの賞味期限が切れている。
カツセ「あの……ちゃんと生活できていますか……?」
佐々木さん「大丈夫です(笑)! この焼きそば、実家の北海道でしか売ってないやつなんです……!」
カツセ「おお、大事にしすぎちゃった?」
佐々木さん「違います! その……インテリアです!!」
カツセ「インテリア!?!?」
佐々木さん「実家が送ってくれたんですけど、いつでも北海道を思い出せるようにって!」
世の中って広いんだな。
壊れた給湯器との戦い方 ~熱湯と冷水のあいだ~
カツセ「お風呂場がないって聞いたんですけど、どうしてるんですか?」
佐々木さん「銭湯に行くか、コインシャワーに行くか、あとは台所の蛇口で頭を洗ってますね」
カツセ「台所の蛇口って……ここですか?」
佐々木さん「そうです! でも給湯器が壊れてて、熱湯しか出ないんですよ」
熱湯をガマンして浴びてるってこと……?
佐々木さん「そんなまさか(笑)!」
カツセ「そうですよね! よかったー!」
佐々木さん「熱湯と水道水を同時に出して、ミックスされたところに頭を持って行くんです」
カツセ「マジか……」
ウイスキーで暖を取る省エネ術
カツセ「南向きの窓ですかね? 日がいっぱい入って、気持ちいいですね」
佐々木さん「そうですね! 日当たりはすごくいいんです」
カツセ「窓、開けてみてもいいですか?」
佐々木さん「はい! 散らかってますけどどうぞ!」
ガラッ……。
ウイスキーと、ビール。
佐々木さん「あ、引きました……!? 昨日まで冷蔵庫がなかったので、外で冷やしていたんですよ」
カツセ「冷蔵庫もなかったんですか!?」
佐々木さん「はい、しばらくはなくてもいけるかなあと……」
カツセ「机の上にもウイスキー置いてありますけど、好きなんですね」
佐々木さん「そうですね。あと、冬場は部屋が底冷えするので、体をあたためたくて飲んでいました」
ここはロシアなのかな……
民宿のような居心地の良さ
カツセ「いろいろ見ましたけど、お部屋自体のスペックで考えたら、決して住み心地が悪い家じゃないですね? 民宿みたいなあたたかさがあります」
佐々木さん「そうなんです! 慣れてくると暮らしやすいですよ」
トイレも和式だけどきれい。
ブレーカーもレトロな感じがかわいい。
カツセ「何か不便なところはないんですか?」
佐々木さん「壁が、すごく薄いんですよね。隣の隣の人の声まで聞こえてきます」
カツセ「隣の隣!?!?」
佐々木さん「ねー、驚いちゃいますよね」
カツセ「そりゃ驚くでしょうね……」
半年前まで家がなかったサバイバルガール
カツセ「探そうと思えばもうちょっといい物件もあったと思いますし、家電や家具を揃えたり改修すればもっと快適な家にできそうだと思うんですけど、なぜここに決めたんですか?」
佐々木さん「わたしは何かを管理をするのがとても苦手なので、できるだけモノを増やしたくないんです。そのほうが引っ越しも楽ですし、フットワーク軽く生きられるんですよね。あとは好きな街に住みつつも、固定費を上げたくなかったというのもあって、この家に引っ越してきました」
カツセ「それまではどこに住んでいたんですか?」
佐々木さん「実は、家がなかったんです。半年近く、友人の家や妹の家を転々としていました」
カツセ「そんな生き方、できるんだ……」
佐々木さん「だから今は、自分の好きな街に帰れる家があること自体がうれしいんですよね」
カツセ「なんで壮大なセリフな気がしてしまうんだろう」
最後に
こうして取材は終了しました!
「入居したてのころは真冬なのに布団もなく、上着を着込んで過ごしていた」という佐々木さん。日常生活を送るうえでモノがどうしても足りないときは、近所に住む人から借りたり、SNSのフォロワーから差し入れが届いたりして救われていたそうです。
そうした暮らしぶりを「他力本願」と言えばそれまでかもしれませんが、2016年の東京でミニマムな暮らしをするとなると、こうした生き方は、新たな地域社会の在り方のひとつとして提案できるのかもしれません。
佐々木さんの都市型サバイバルライフは簡単に真似できるものではないかもしれませんが、「自分の好きな街に住む」という夢や目標は、簡単に捨てるべきではないということを強く学ぶ機会となりました。
お部屋のスペック
- 最寄り駅:下北沢
- 家賃:42,000円
- 間取り:1K
- 築年数:50年ぐらい
- この部屋に住んでいる期間:3ヵ月
- この部屋の好きなところ: 駅から近い
- この部屋の嫌いなところ: 壁がものすごく薄い