賃貸の手付金・申込金はキャンセルすれば返還される?泣き寝入りしないために知っておくべきルール

賃貸の手付金・申込金はキャンセルすれば返還される?泣き寝入りしないために知っておくべきルール

賃貸物件の契約をする際に、不動産会社から手付金や申込金といった名目の支払を求められたことはありませんか? そうしたお金は、契約をキャンセルしたときには戻ってくるのでしょうか。

じつは、東京都など一部の自治体では、そもそも原則的に賃貸契約時に手付金・預り金を求めないよう指導をしています。また、国土交通省は預り金の返還の要求を拒んではならないという省令を出しています。つまり、契約前であれば基本的に手付金や申込金は戻ってくるのです。

しかし、手付金や申込金にまつわるトラブルは後を絶たないようで、各自治体や省庁などが注意喚起をしています。そうしたトラブルに巻き込まれないために、知っておきたい基礎知識を紹介します。

手付金とは?

手付金は、契約を交わす際に代金の一部を支払う金銭を指します。仲介業者に支払う仲介手数料とは別の金銭です。手付金は一時的に預けるものなので、代金支払い時に返還されますが、手続きに手間がかかることから、手付金は初期費用や家賃の一部に充当されることが多いです。手付金の金額に決まりはなく、10%ぐらいが相場となっています。

一般の取引では手付金を支払った時点で契約締結とみなされますが、賃貸契約については仲介業者が契約締結前に「重要事項説明」を行うことを義務付けられています。重要事項説明がない状態で手付金を支払っても、契約締結とはみなされず、名目に関わらず預り金として扱われます。

仲介業者は借主に対し、契約が成立するまでに宅地建物取引士による重要事項説明(※)を行うとともに重要事項説明書を交付する義務があります。もし、重要事項説明を受けていないにもかかわらず、仲介業者が「契約は成立したので手付金は返還できない」と言うのであれば、重要事項説明義務違反(宅地建物取引業法第35条違反)ではないか、と仲介業者に指摘しましょう。
出典:大阪府/お金を払った後にキャンセルしたいが、お金は返金される?

申込金・預り金とは?

正確には申込証拠金と呼びます。契約締結前に支払う金銭で、他の希望者に販売されないよう順位確保や意思確認を目的として支払います。つまりは仮押さえをするために支払う金銭です。預り金も申込金と同様の意味合いです。

申込金の金額も決まりはなく、1万円程度の場合もあれば、5〜10万円程度必要になることもあります。まだ正式に契約を締結しているわけではないので、キャンセルを希望すれば基本的には返還してもらえます。契約に至った場合は、契約金等の一部に充当されます。

東京都では賃貸契約の手付金・預り金は原則禁止

1992年(平成4年)6月に、東京住宅局が特別なケースを覗いて賃貸住宅の手付金を禁止する旨の指導を出しています。この指導は賃貸住宅に対してですので、不動産売買に関しては対象外です。

予約金、申込金、預り金などと名目を変えて要求することも同じく禁止されています。契約前に手付金や申込金を要求され、キャンセルが発生した場合は返還しないとしている業者は明らかに指導を無視しています。そのような業者に当ってしまった際には、別の業者に相談しなおした方がよいでしょう。

宅地建物取引業者は預り金の返還を拒んではならない

旧・建設省(現・国土交通省)は、1996年(平成8年)4月1日付で、宅地建物取引業者は預り金の返還は拒んではならない、という旨の省令を施行しています。契約前に支払った預り金は、支払い側がキャンセルをすれば原則的に返還されることになっています。

宅地建物取引業法施行規則 – 第十六条の十二 – 二
宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
出典:宅地建物取引業法施行規則

手付金禁止は東京の条例ですが、こちらの省令は国土交通省が定めているものなので、全国共通です。契約締結前にキャンセルしても支払った預り金を返還しない業者は、法令違反となります。

大阪の賃貸契約における手付金の見解

大阪府では「手付金を支払うことは、契約することと同じ」とし、手付金の支払いに対して注意喚起しています。預り金として支払った金銭が手付金にあてられるケースもあるため、預り金の支払い時にも注意しなければなりません。

実際には手付金の支払と賃貸契約の成立はイコールではありませんが、手付金や申込金を支払う際にはそれくらいのつもりでいた方がトラブルを避けやすいでしょう。

出典:契約の際には、こんな注意を(大阪府公式HP)

キャンセルすれば手付金・預り金は100%返還される?

預り金の名目であれば国土交通省が定めた省令によって契約後でも返還を要求できますが、大阪府が注意喚起しているように、手付金は契約が成立しているとキャンセルしても返還されない場合があります。

「宅地建物取引主任者による重要事項の説明」「契約書類の提出」「貸主審査の通過」が済んでいるとまず契約成立とみなされるため、キャンセル時に手付金の返還を求めるのは厳しいでしょう。また、預かり金の名目で支払っていても、契約成立後は手付金として取り扱う旨を契約書に盛り込まれていることがあるので注意が必要です。

まとめ

賃貸契約前の預り金、契約後の手付金では扱いが異なります。

賃貸契約時に初期費用がいくらかかるか心配な方、引っ越し代金を節約したい方は、以下のリンクから仲介手数料の賃貸物件を検索してみてくださいね。

参照)
手付金の賃貸用語解説 | キャッシュバック賃貸
申込金の賃貸用語解説 | キャッシュバック賃貸